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この展覧会は終了しました 版画

勝山正則・春枝 二人展

基本情報

  • 会期
    2024年08月13日(火) 〜 2024年08月18日(日)
  • 会場
    1階
  • 時間
    12:00~19:00(最終日~17:00)
神田神保町の本屋街の片隅にある、カウンターの左端の席で飲むのが好きだった。
 前の壁に一枚の版画が掛かっている。京の町家を吹き抜けた風が、暖簾を揺らしている。墨色の濃淡から生まれる爽やかな風に吹かれ、心地よい時間の流れに身を委ねている気分にさせてくれるのだ。
 「そんなに気に入ったのなら・・・」。店の女将さんが旧知の版画家夫妻に電話をかけてくれたのが、勝山先生との出会いになった。もう30年近く前のことである。
 お会いして、その人柄に瞠目した。社会の裏側ばかりを嗅ぎまわる日常を送っていると、幼児のような先生の純真さは、時にまぶしくさえある。ご夫妻が上京してくれば食事を共にし、私が大阪勤務になれば、京都に蛍狩りに出かけて飲み歩いた。病を得て、さすがに飲み歩くことはなくなったが、車椅子を押しながら下鴨神社を散策し、変わらぬ温かな魂に触れさせてもらった。
 先生は版画以外のことには一切頓着せず、その先生を春枝夫人と長男、基樹さんがしっかりサポートする。一家が醸しだす温かな空気が常に「二人展」の会場を支配し、他に類を見ない魅力になっていると感じる。
 例の版画「風さん(2)」は今、拙宅のソファの横に掛かって、爽やかな風を送ってくれている。
                          (元毎日新聞専務取締役主筆 伊藤芳明)
 
勝山 正則 (Masanori Katsuyama) 
1942 京都市に生まれる
1957 独学で木版画をはじめる
1971 京都市の平安画廊で初の個展を開く(以後2008年まで)
    その後、京都・東京・出石(兵庫)・青谷町(鳥取県)・名古屋・
    長野・  奈良・富山・静岡・滋賀・広島・大分など各地で個展を開く
1974 全関西国画会新人賞受賞
1987 毎日新聞社世界歴史都市会議に寄せて「京は甦るか」、に木版画挿絵連載
1988 日本版画会に出品、初入選。以後継続出品
1990 朝日新聞京都版「ワンダーランド」に木版画挿絵連載
1996・97 日本版画会選抜展出品
1997 プノンペン(カンボジア)で木版画の指導  個展を開催
    棟方記念版画大賞展入賞
2001 関西版画会創立(主宰)
2002 キエフ(ロシア)で個展
2003 取県青谷町立あおや郷土館で「因州和紙木版画展」を開催
   (主催:青谷町教育委員会・あおや郷土館)
    日本版画会にて日本版画会賞受賞
2005 関西版画展にて因州和紙による版画展との交流、
     後援:毎日新聞社大阪本社、協力:あおや郷土館
    (関西版画展第1回よりカナダ版画協会とも交流)
    スペイン・バルセロナのサン・アングレウ区役所のギャラリーで個展
  ピカソが卒業したリョッチャ美術学校で木版画制作の講義・実習
2006 鳥取市あおや郷土館で「関西の作家による現代版画展」
    主催:鳥取市教育委員会・あおや郷土館、協力:関西版画会)
     「全国版画選抜展」鳥取市青谷町・あおや和紙工房主催
2008 鳥取県・岩美町観光会館2階ギャラリー(浦富八景勝山正則木版画展、
    主催:岩美町、観光(岩美町)協会)
    東京・第49回日本版画会展にて萬華賞受賞(竜神洞・・・浦富八景より)
2009 京都・ギャラリーヒルゲート「勝山正則展」
2010 ハワイ(アメリカ)で個展
    京都・ギャラリーヒルゲート「勝山正則・春枝展」(以後毎年開催)
2016 朝日新聞京都版文化面 俳句・短歌欄の挿絵担当(現在も連載中)
2018 関西版画会 解散
2019 京都・長岡天満宮 神楽殿「勝山正則・春枝 版画展」
2022 勝山正則・春枝 二人展(豊岡市立美術館-伊藤清永記念館-)
 元日本版画会会員
 
勝山 春枝 (Harue Katsuyama)
1942 京都生まれ
1960 京都市市民アトリエにて銅版画習得、 京都を中心に個展・
    グループ展で活動
2006 独学で木版画(布と和紙を使って)制作、 日本版画会展 出品
    以後毎年出品
2010 第51回日本版画会展 奨励賞
    版画フォーラム 和紙の里ひがしちちぶ展
    出品以後毎年出品(様々な賞を受賞)
    ギャラリーマーヤにて個展(高槻市)
2013 版画フォーラム 10周年記念パリ展  選抜出品
    「五次元KYOTO展」 出品
2021 日韓友好版画・挿絵(イラスト)展  神戸新聞社賞(兵庫県立美術館)
2022 勝山正則・春枝 二人展(豊岡市立美術館-伊藤清永記念館-)
現在 無所属

 


勝山正則の逝去に際しまして

7月30日夜10時20分、版画家勝山正則が亡くなりました。
数年に及ぶ闘病生活の間もベッドの上でも版木を彫り、制作を止めることはありませんでした。
今回の入院でも、病室に二人展の案内状を貼り、会場に在廊することを楽しみにしておりました。
病状の急変でそれは叶わなくなりましたが、どんなにつらくとも作家魂を失わず、制作、発表を喜びとした故人の意志に従い、「勝山正則・春枝二人展」は予定どおり開催させて頂くことと致します。
急なことで葬儀は近親者のみで行いましたが、この展覧会を故人を偲ぶお別れの場として、御来廊、御高覧いただけましたら幸いに存じます。
2024年8月 勝山 春枝

勝山 基樹


本日は「勝山正則・春枝二人展」にご来場いただき、ありがとうございます。勝山正則の急逝に伴い
、追悼展として開くことになりましたが、病床でも彫刻刀を離さず、最後まで版画家であった本人の意思を尊重して当初予定通り、開催させていただきました。
ここに「前に進む」と題した作品があります。勝山正則の「絶筆」になった作品です。7月上旬、下絵を自宅のベッドで書き上げました。薄紙に油性マジックを使って描いたのはいつもの通りですが、題名を先に決めたことも、そして空想で描いたことも、初めてのことでした。
「基樹、頼んだ」。託された長男基樹が下絵通りに版木を彫り、刷り上げると、本人は出来栄えに、「OK、OK」と手をたたき、目を細めていました。タイトル、そして波立つ水面に帆を張った小舟が今にも漕ぎ出そうとする様は、本人の心情の表れなのでしょう。
本人はまだまだ作品を作り続けたかったと思います。故人を偲んでいただくとともに、勝山正則という版画家のことを、心のどこかにとどめておいていただければ嬉しいです。
2024年8月13日
勝山春枝  勝山基樹

勝山正則「前に進む」

 
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