石母田ななみ展

基本情報
- 会期
2023年12月19日(火) 〜 2023年12月24日(日) - 会場
2階 - 時間
12:00~19:00(最終日~17:00)
石母田ななみ
女子美術大学芸術学部洋画科卒業
デザインの仕事をする傍ら、炭坑のスケッチに通う
ボルネオ島、イラン、バングラデシュに滞在、取材
1999・10~2002・3 京都教育大学彫刻研究室研究生として学ぶ
2001 日彫展奨励賞受賞 2005 京都彫刻家協会会員
2007~2017 日本彫刻会会員 2010 日展京都新聞社賞受賞
2011~ 日展会友
個展
2013 ヒルゲート(同18)
2016 ギャラリー洛(同20,21)
石母田さんの個展に寄せて 勝野 眞言
私は半世紀近く彫刻を通して人体と向き合っているが、人間そのものの存在に興味を持っている。
目を凝らしてよく見ている。谷や丘のように変化するかたちや、髪や目や爪、口や耳や鼻の存在、そして伝わってくる温かい体温と色、柔らかさと硬さ、軽さと重さ、匂いまで。生きていく秘密を知ることがある。
石母田さんと知り合って何年になるであろう。東京都美術館の彫刻の展覧会の時であったと思う。個性的なコスチュームと重ねて覚えの悪い私でもクリアーに記憶に焼き付けることができた。作品を前にして私と同じように人体をテーマに制作し、同じように苦しんでいた。
それから展覧会の度に会うようになり、仕事場の様子、かたちの見方、素材の話などをし、翌年にどんな仕事になったかと興味を持って見ていた。彫刻を始める前、絵画を専攻しており、そのうちに量の中に色の混在した世界を探っているように思った。
対象を観てつくるというのは一番厄介な仕事である。やればやるほど求めるものが遠くなって行く。私も美術の道に入ってから、人をこれまで作り続けてきたが、思うようにできないからこそ続けてこられたと思う。
石母田さんの苦闘している姿を見ていると自分と重ねてしまうのだ。絵画の世界から彫刻の道に入った石母田さんがこれからどんな展開を見せるのか楽しみにしている。
勝野 眞言(崇城大学芸術学部美術学科 教授・日展 会員・2020年 日展最高賞受賞・白日会 会員・日本彫刻会 会員)
2022年 紅葉美しき晩秋の日
「お医者さん孝行しましょう」内緒にしていた「病気も公表し、お世話になっている日展の先生方にも元気で制作しているとご挨拶しましょう」 ヒルゲートオーナー人見ジュン子さんのお言葉に、私は抱き上げられるようにフワ~ッと浮き一年後の個展が決まった。
病院の帰り道だった。
初対面のdoctorはおっしゃる「昨年には医者がびっくりする大変な心臓の手術を受けられたの
ですね」「よく生きて戻られました!」「今を大切に生きて下さい。良い作品を作って下さい!」と
この5年余り、まるで股旅剣士のように刀傷だらけ。病気は高級デパートの品揃い。</d iv>
今や2~3人に1人は何らかのがんにかかるらしい。遡る2017年7月と8月に食道がん、
乳がんと連続手術を受ける。数ヶ所リンパ節に転移しているのを残した。
手術や放射線で根治めざすか?だが引き替えに食事が困難になる。腕も使えず彫刻が作れない。
再発、転移だってありうる。
病にハンドルは預けない。私は「がんと戦わない、向き合わない」
治療は信頼する優秀なdoctorにお預けし、私は、「食べて、作って行けるところまでいこう!」
唯一戦ったのは、長年私の体内を流れる血液の「アルコール割」を断つこと。残したがんには子守歌を聴かせた。9月の中旬には3分粥を啜りながら日展の制作を始める。篦(ヘラ)が踊る!
私の制作はモデルを使わず、時代の今を感じ、思考し、人形の姿形でどう表現するか探す。動かない像に過去、現在、未来への時間の流れを意識している。愛と平和を願い粘土に練り込む。
病気や怪我などで手抜きは出来ない。半身像なら足が不必要であること。像が小さければ構成の面白さを課題にしてみる。
何らかの病気を抱え尚彫刻に情熱を注いでおられる方は少なくない。震災で家を流されても制作を諦めず日展に出品された方等々に頭が下がる。
私は、出品するたび全国の先生方から温かい助言、励ましを受け支えられてきた。
4年間、日展4回、個展3回と制作、私はまだ生きていた!がんも眠っていた!
手術から5年目の2021年夏の個展直後、昌頭に記した手術を受け生還。すぐに厄介な「帯状疱疹」にかかりこじらせてしまった。手術後や古傷も加わり「痛みの交響曲第九」である。今日まで「裸族」で引き籠もり生活。「痛いなりの中で何か新しい作品が生まれるかも」とdoctorに促される。私は痛さに負け疲れていた。
此度見つかっている肺がんは、私への「喝!」なのか?
来る年には、日展、個展のため制作を進めたい。妨げるものたちに子守唄を歌いながら。
小さな個展なのに、花火だけは派手に打ち上げる。 2022年暮 記
無事に今日を迎えることが出来た。出来具合はともあれ、願いが叶えられたのは嬉しい!支えていただいた全ての方々に深く感謝申し上げます。
石母田 ななみ