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この展覧会は終了しました 版画

4人の現代日本の版画家-中林忠良・野田哲也・星野美智子・柳澤紀子

基本情報

  • 会期
    2024年04月30日(火) 〜 2024年05月12日(日)
  • 会場
    1階, 2階
  • 時間
    12:00~19:00(最終日~17:00)
  • 休館日
    月曜日
版表現の探究-現代日本版画家、星野美智子、中林忠良、野田哲也、柳澤紀子の差異と多様性
都築 千重子(東京国立近代美術館研究員)
 80代を超える今日にいたるまで、エネルギッシュな制作活動を続けてきた星野、中林、野田、柳澤の軌跡。この展覧会は技法への深い理解に立った表現の追求を継続してきた4人の個性の違いを一層明確に見せてくれるにちがいない。そしてこのヴァリエーションの豊かさは、現代日本版画の豊潤な実りの一端を示すものでもあるのだ。
 油絵から、「見えない思考や心の世界を映し出す鏡のような空間表現に自分を追い込んでイメージの表現だけに賭けようと決心し」て、モノクロ・リトグラフへと転じた星野は、アルゼンチンの小説家で詩人ホルヘ・ルイス・ボルヘスと出会って得たインスピレーションを糧に表現を深化させ、ボルヘスシリーズを発表する。変容してやまない、時に流動的、時に混沌とも見える光と闇が生む幻想的なイメージは、異次元世界に観者を引き込むかのようである。また、水と油の反発を利用した従来の技法から、水を使用せずにシリコンを用いて制作するウォーターレス・リトグラフにシフトしたほか、近年はデジタル・リトグラフにも挑戦している。
 一方、詩人金子光晴の「すべて腐らないものはない」という言葉を信念に、腐蝕銅版画を制作する中林。はじめ社会や時代との関連が強い作品を発表していたが、渡欧から帰国後、自らの足元を見つめ直し、眼前の現実と向かい合おうと始めたのが、1977-78年の〈Position〉〈転位〉シリーズ。枯れた芝草などを即物的に原寸コピーした原画をもとに作った版を銅版に転写、さらに手描きも加えて生み出された手触り感のある銅版画。近年は森や水辺など自然への視界は拡がり、光が際立ってきている。詩情は抑制され、自然の素材感やリアリティを失わない、理知的に構成された濃淡のモノクロームが織りなす画面には、生と死、光と闇や時のうつろいなどを想起させるイメージへの変容も読み取れよう。
 同じく、自分の立ち位置を起点に制作するのは、「もっと足もとをみつめ、身近な自分の生活の中に素材をもとめ、日常の記録を通じて芸術を考えてみたいと決心したのである」と語る野田。1968年の第6回東京国際版画ビエンナーレ展で国際大賞を受賞し一躍脚光を浴びた。家族や知り合いの姿、身のまわりの風景といった、作者の心を掻きたてた自らの日常をモチーフに、写真と版画の技法を併用した「日記」を一貫して制作している。写真から不要な部分を消し、手描きを加えて版画化することで独自の表現性を獲得。余白が効き、知的な緊張感や清澄さを有しながらも、柔らかい色調と和紙の風合いとあいまって穏やかな詩情を漂わせている。
 インドの火葬場で眼にした体験、チェルノブイリや福島の原発との対峙といった社会的な関心が、人と自然の根源的な関係性に対する深い思索に結びついている柳澤。鳥や犬、狼などの動物、水や樹木、アンモナイトや翼、舟が登場し、これら単純化され、断片化されたモチーフと人間とが共存する原初的風景が立ち現れる。時に孤独や恐れ、傷みを感じさせながらも、鮮やかな色彩と腐蝕が織りなす陰影の諧調の効果とあいまって、人と自然をめぐる詩的な神話に昇華されている。
(2021年東京日動画廊における「現代日本の版画家4人展」カタログより抜粋)
中林 忠良 
Tadayoshi NAKABAYASHI
1937 東京都生まれ
1965 東京藝術大学大学院美術研究科版画専攻修了
1967 第7回現代日本美術展 賞候補(東京都美術館)
1972 第3回版画グランプリ展 賞候補(日動画廊 ’73グランプリ受賞)
1975 文部省派遣在外研修員としてパリ国立美術学校
    ハンブルグ造形芸術大学で研修(~’76)
1982 和歌山県立近代美術館賞受賞(東京都美術館・京都市美術館)
    日本銅版画史展-キリシタン渡来から現代まで(東京都美術館)
1983 第1回中華民国国際版画ビエンナーレ 国際大賞受賞
1984 第7回東ドイツ国際版画トリエンナーレ  インターグラフィック賞受賞
1986 第11回クラコフ国際版画ビエンナーレ 優秀賞受賞(ポーランド)
    第5回ソウル国際版画ビエンナーレ 国際大賞受賞(大韓民国)
1987 第4回ヴァルナ国際版画ビエンナーレ 銀賞受賞(ブルガリア)
1997 中林忠良-腐蝕銅版画-白と黒の世界展(池田20世紀美術館)
2003 紫綬褒章を受章
2009 「中林忠良銅版画-すべて腐らないものはない」町田市立国際版画美術館)
2014 瑞宝中綬章を受章
2017 「中林忠良銅版画展 腐蝕の海/地より光へ」(川越市立美術館)
2019 「中林忠良展 銅版画-腐蝕と光」(茅野市美術館)
    「中林忠良銅版画展-腐蝕の旅路-」(O美術館)
2023 文化功労者
現在 東京藝術大学名誉教授、大阪芸術大学客員教授、日本美術家連盟理事長、
日本版画協会名誉会員
パブリック・コレクション
国立国際美術館、東京国立近代美術館、東京都現代美術館、アメリカ議会図書館、大英博物館版画素描室、エコール・デ・ボザール、パリ国立図書館、ポーラ美術館、東京藝術大学美術館、町田市立国際版画美術館 他
 
野田 哲也
Tetsuya NODA
1940 熊本県生まれ
1965 東京芸術大学大学院美術研究科油絵専攻修了
1968 現代美術の動向展(京都国立近代美術館)
    東京国際版画ビエンナーレ 国際大賞受賞
1971 サンパウロビエンナーレ
1972 ベニスビエンナーレ(グラフィックインターナショナル部門)
1977 リュブリアナ国際版画ビエンナーレ 大賞受賞
1978 ノルウェー国際版画ビエンナーレ 大賞受賞
2000 日本美術の20世紀(東京都現代美術館)
20
02 未完の世紀:20世紀美術がのこすもの(東京国立近代美術館)
2003 紫綬褒章を受章
2004 「ある人生の日々:野田哲也の芸術」展 (アジア美術館/サンフランシスコ)
2008  アジアとヨーロッパの肖像(国立国際美術館)
2014 「野田哲也の日記」展(大英博物館/イギリス)
2015 瑞宝中綬章を受章
2016 アジアン・アートビエンナーレ、バングラデシュ
2020 「My Life in Print」展(シカゴ美術館/アメリカ)
2022 「野田哲也的當代版画日記」(香港大学美術博物館)
2023 「野田哲也の版画」(上野の森美術館/東京)
現在 東京藝術大学名誉教授
パブリック・コレクション
京都国立近代美術館、東京国立近代美術館、国立国際美術館、東京都現代美術館、熊本県立美術館、上野の森美術館、ニューヨーク近代美術館、ニューヨーク・メトロポリタン美術館、シカゴ美術館、大英博物館、リュブリアナ近代美術館、オーストラリア国立美術館
星野 美智子
Michiko HOSHINO
1934 東京都生まれ
1956 東京女子大文学部卒業
1963 東京芸術大学美術学部絵画科 油絵専攻卒
1964 油絵発表・個展・毎日現代展等(~’69)
1972~国内外にて版画個展/企画展/国際展等出品
1988 ボルヘス・シリーズによる個展(’93,’99,2015、東京・ストライプハウス美術館)
1990 文化庁芸術家海外派遣特別研修員としてニューヨーク/ブエノスアイレスに滞在
1991 本の宇宙展 (栃木県立美術館)
    ギリシャ国際版画展 リトグラフ作家賞受賞(アテネ版画協会 /ギリシャ)
1994 アルゼンチン国立版画美術館主催 個展 (ブエノスアイレス)(同’99)
    東京芸術大学絵画科 リトグラフ担当 非常勤講師(~’98)
1997 個展(ウォルシュギャラリー/シカゴ)
1998 現代日本の美術展 (’98クラコフ国立美術館 ’99リュブリアナ国立近代史博物館)
2001 個展(アートフォーラム/ニューヨーク)(同’06)
2009 第14回山口源大賞展 大賞受賞(沼津市)
2013 個展(Galeria P I C I/韓国・ソウル)
2014 フローレンス、シアトル、 深圳、 ニューヨークにて 招待展
2019 画集増補版 「星野美智子全版画 1971-2019」 出版記念展(シロタ画廊)
2017 デジタル版画展 (O美術館)(~’24)
現在 国画会会員、日本版画協会会員、日本美術家連盟会員
パブリック・コレクション
アルゼンチン国立版画美術館、ボルヘス財団、大英博物館、リュブリアナ国立近代史博物館、米国議会図書館、ベルギー・フェリシアンロップス美術館、ギリシア・テサロニキ美術館、スエーデン・グラフィカンフス美術館、ルーマニア・クルージュナポカ美術館 関山美術館、浙江省美術館、国立近代美術館、町田市立国際版画美術館、栃木県立美術館、沼津市庄司美術館 他
柳澤 紀子
Noriko YANAGISAWA
1940 静岡県生まれ
1964 第32回日本版画協会展 日本版画協会賞受賞
1965 東京藝術大学大学院油画研究科油絵専攻修了
1992 文化庁派遣芸術家在外研修員としてロンドンに滞在
1998 「柳澤紀子展」(ティコティン日本美術館/イスラエル)(同’09)
1999 「柳澤紀子展」(ルーマニア国立美術館)(同’17)
    「現代日本絵画の展望展」東京ステーションギャラリー賞受賞
2001 第10回山口源大賞展 大賞受賞(庄司美術館/沼津)
    個展(ヒルサイドフォーラム/東京)
2003 武蔵野美術大学造形学部油絵学科版画研究室教授(~’11)
    「越後妻有アートトリエンナーレ2003」(モニュメント《融》恒久設置/新潟)
2004 「銅版画の地平Ⅱ 浜口陽三と銅版画の現在」(ミュゼ浜口陽三・ヤマサコレクション/東京)
2008 「永遠の瞬間 越境する身体」(酒田市美術館/山形)
    「魔女たちの九九」展(武蔵野美術大学美術資料図書館、ヒルサイドフォーラム/東京)
2009 「水邊の庭」(静岡県立美術館/静岡)
2011 紺綬褒章を受章
2013 「転生の渚」(浜松市美術館・平野美術館/浜松、15、オリエント美術館/リスボン・ポルトガル)
2016 「Original Memory Omen」(上海半島美術館/中国)
2019 「柳澤紀子版画展」(浙江美術館/浙江省・中国)
2023 「柳澤紀子 動物のことばセキガハラ」(せきがはら人間村生活美術館/岐阜)
現在 公益財団法人 イサム・ノグチ財団評議員
パブリック・コレクション
東京藝術大学大学美術館、埼玉県立近代美術館、静岡県立美術館、ティコティン日本美術館(イスラエル)、サークレーギャラリー・スミソニアン(米国)、ルーマニア国立美術館(ルーマニア)、上海半島美術館(中国)、浙江美術館(中国) 他
夜話市民講座(ギャラリートーク)
中林 忠良・野田 哲也・星野 美智子・柳澤 紀子  (版画家)
「それぞれの仕事」
5/4 (土)  18:00〜20:00
参加費1,000円(学生500円) 定員35名(要予約) ギャラリーヒルゲート1F
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