森本 玄 個展「鏡とランプのあいだ」
基本情報
- 会期
2026年05月26日(火) 〜 2026年05月31日(日) - 会場
2階 - 時間
12:00~19:00(最終日~17:00)
なにかを表現する前に、目の前のものが存在していることの驚き。対象と向き合いながら描くことは、その存在そのものと向き合うことであって、作者の身体は眼と脳で認識した結果を紙の上の線に置き換えるための装置のような感じがする。つまり、私が何かを表現している、というのとは少し違う。目の前の空間と、経過する時間を感じながら描いていることが楽しい。対象が人だけでなく、もの、または風景の場合にも、向き合うこと、それに伴う時間の経過、その場の温度や光などの変化があり、常に動いている。その実体を認識する過程として、描くことの奥行きがあるように思われる。
古代ギリシャでは、現代で語られる「芸術」とよばれるものの幾つかを「模倣(ミメーシス)の技術」と呼んでいたとされる。鏡は写すもの、実体の模倣、再現であり、虚像でもある。それはプラトンのイデアと現実世界の関係にも似ている。一方で、芸術家の内面の表現に脚光が当たるようになったのは、18世紀から19世紀に入る辺りのロマン主義以降という。美学や美術史に触れることは、時代を直線的な進歩と捉えず、今や常識と思っている価値を俯瞰し、再考するために必要なことだと思う。
自分がドローイングをしているときの立ち位置を「呼吸する鏡」と捉えて十数年が経った。家のまわりにはたくさんの自然やものがある。丁度具合の悪くなったテラスを大工さんにお願いして補修してもらった。そのときに撤去された材木が運びやすいサイズのブロック状になって、庭に積まれた。外側は材木の体裁を保ちながら、中は朽ちて抜けてしまい、ふわふわと空洞になっているものもあった。近作では、それらを積み木のようにして組んでみた。目の前のモチーフから、世界で起きていることをアナロジー的に展開することにも関心がある。それにしても、学生の頃使っていた版画紙が4倍近くの値段になったり、灯油の値段がほぼ1.5倍になったことだったり、私たちの当たり前の日常が、こんなにも脆いものだったのか。
…とりとめがなくなってきた。M・H・エイブラムズ『鏡とランプ』(1953)の関係については、もう少し考えてみたい。
〈参考図書〉『近代美学入門』(2023)井奥陽子 ちくま新書
森本 玄 MORIMOTO, Gen
三重県に生まれる
1995 東京藝術大学大学院博士後期課程修了、博士(美術)
-個展-
1994 M material-method 展/東京芸術大学陳列館
1995 「肌理の海」/クレイギャラリー(東京)
1998 Paintings/On Gallery(大阪)
2003 「受容」/ギャラリー恵風(京都)
2006 between sky and earth/ギャラリー16(京都)
2015 ギャラリー恵風(京都)
2016 第5回「ドローイングとは何か」展大賞受賞記念/ギャルリ−志門(銀座)
2023 「呼吸する鏡II」/ギャラリーCreate洛(京都)
「呼吸する鏡II-2」/GALERIE SOL(銀座)
2024 「五百年後のメレンコリア」/ギャラリーCreate洛(京都)
-主なグループ展-
1989 第19回現代日本美術展/東京都美術館、京都市美術館
第4回中華民国国際版画ビエンナーレ展
1990 第1回高知国際版画トリエンナーレ展/いの町紙の博物館
1991 第19回リュブリアナ国際版画ビエンナーレ展(ユーゴスラビア)
1995 第1回ソフィア国際版画トリエンナーレ展(ブルガリア)
1996 第11回ドイツ国際版画トリエンナーレ展(ドイツ)
1999 第4回昭和シェル石油現代美術賞展/目黒区美術館
2001 津西高等学校 第8回「絵画の流れ」展∞【やわらかな結晶】/三重県立美術館県民ギャラリー
2003 京都・洋画の現在/京都文化博物館
2004 とよた美術展’04/豊田市美術館
2005 シェル美術賞展/代官山ヒルサイドフォーラム
2007 とよた美術展’07/豊田市美術館
2008 Busan Biennale 2008 Sea Art Festival(韓国)
Fuse / Fureru 2008/The Sesnon Art Gallery(アメリカ合衆国)
2009 アウトレンジ展2009/文房堂ギャラリー(お茶の水) ※O Jun氏企画
2013 「はじまりの部屋」展(賛助出品)/康耀堂美術館(長野)
2015 第5回「ドローイングとは何か」展/ギャルリ−志門(銀座)
2016 OSTEN BIENNIAL of DRAWING Skopje 2016(マケドニア)
2019 第19回サルセル国際版画ビエンナーレ展(フランス)
第20回ヴァルナ国際版画ビエンナーレ展2019(ブルガリア)
2021 「中林忠良ー版画の系譜と展開」展/ギャラリー恵風(京都)
2022 「逸脱する声ー京都芸術大学美術工芸学科専任教員展」/ギャルリ・オーブ(京都)
-受賞-
1986 久米圭一郎賞(東京藝術大学)
1989 瀧冨士美術賞(日本交通文化協会)
卒業制作O氏記念賞(東京藝術大学)
1989, ’90 (第14回、第15回)全国学生版画展買上賞
2004 とよた美術展’04平面の部優秀賞
2014 第4回「ドローイングとは何か」展準大賞
2015 第5回「ドローイングとは何か」展大賞
2016 OSTEN BIENNIAL of DRAWING Skopje ドローイング部門1st. Award受賞(マケドニア)
2019 第19回サルセル国際版画ビエンナーレ展 2nd prize of the city of Sarcelles(フランス)
-収蔵-
町田市立国際版画美術館、東京藝術大学、京都芸術大学、カリフォルニア大学サンタ・クルーズ校、たかつかさ保育園、兵庫県立光風病院、株式会社大島造船所、Osten Museum(マケドニア)、Inter-Art Foundation, Aiud(ルーマニア)

